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1/友達作りは強引に





 春。
 季節はまさに春!
 桜咲く春!!
 やってきたわ、あたしの時代! ……とまではいかないけど。
 それでも今のあたしは最高にハイだった。気分は上々! 天気はまさに快晴!
 まさしく入学式日和な天気にあたしは満足気に頷いて、学校までの道のりを歩く。
 そう。
 今日は待ちに待った入学式。
 厳しい受験戦争を乗り越え、新たな生活のスタートを切る今日この日に乾杯! せずにはいられない勢いで、あたしは胸を高鳴らせた。
 念願の一人暮らしも叶って、いうことなしだ。今まさに倖せの絶頂とも言えよう。
 あたしこと、撫茅 詩亜(ナガヤ シア)は、今日をもって憧れの女子大生となったわけだ。その響きにグッとガッツポーズを決める。すばらしい。
 慣れ親しんだ故郷を離れ、未知の世界へ一人足を踏み入れるのにはちと不安もあったが、なぁに、住めば都! まさにその通り。 何事もやってやれないことはない。
 あたしは不適に笑う。すれ違った人が何人か驚いて振り返ったけど、この際気にしない。なんたって今のあたしは超絶ハッピィなんだから。
 待ってろすばらしいキャンパスライフ!
 青春を謳歌してやるぜ!
 あたしはニヤつく顔を必死に押さえ、気を引き締めて入学式の会場に足を踏み入れた。



 +++++



 素晴らしい。
 素晴らしすぎるぞ、大学。
 広いし綺麗だし、女の子ばっかだし! ってそりゃぁ、女子大だからそうだけども。
 あたしはわざと咳払いをし、気を取り直してまわりの環境を見渡した。
 本当にすごい。
 一回下見できたことはあるが、あの時は何かと緊張ばかりしてゆっくり見れなかったし、とにかく受からなければ意味がないと思って勉強のほうに集中してたから、 ゆっくりと改めてキャンパス内を見てみると、新発見ぱっかりだ。
 無事入学式も終わり、まっすぐ家に帰ってもどうせすることもないと思って、あたしはキャンパス内を探検することにした。
 はっきり言って、探検してよかったと思う。何にも知らずにのうのうと帰っていたら、初日の授業は絶対迷って教室に辿りつけなかっただろう。
 今、学校内の位置を頭に入れながら一つ一つ教室をまわっているので、大体の地図は出来上がっている。
 これで、初授業から遅刻をするという間抜けなことは無いだろう。もっとも、寝坊しなければ、の話だが。
 それにしても……
「広すぎやぁーん」
 感動と呆れと。両方入り混じったような声を出して、結局は建物の大きさに感嘆する。
 いいなぁ。これからここであたしのキャンパスライフが始まるんだ。
 いけね。また顔ニヤけてきちゃったよ。あたしは軽くかぶりをふって、表情を改めた。
 大体まわりきって充実感を味わったところで、あたしは踵を返す。そろそろ帰ろう。ゆっくり見すぎて日が傾きかけていた。
 思って、廊下の角を曲がろうとしたその時―――――
「ぎゃっ」
「うわっ」
 ちなみに、あたしが咄嗟に口にしたのは前者のほうだ。咄嗟とはいえ女とは思えない悲鳴だ。ぎゃって……
 ていうか、誰かにぶつかった。あたしは勢い余って床にしりもちをつく。思いっきりぶつけて、かなり痛い。
「あ、ヤベッ……だ、大丈夫?」
 ふってきた声に、咄嗟に顔を上げた。戸惑ったような声。視界に広がった光景に、あたしは目をぱちくりさせる。
 ロングの綺麗な薄茶色の髪を肩に流して、見るからに健気そうな雰囲気を纏った美少女が、目の前に立
ち尽くしていた。なんか今ちょっと言葉遣いが微妙におかしかった気もするんだけど、きっと気のせいだろう。
「ぃてて……だ、大丈夫です」
 全然大丈夫じゃないけど。とりあえずそう告げながら立ち上がる。相手は美少女。しかも儚げ。
 傍から見れば悪者はあたしになるだろう。
「ゴメンなさい。あたしが突然飛び出したから」
 飛び出した記憶なんてないんだけど、とりあえず謝っておくことにした。言うと、彼女は安心したように肩をなでおろし、微笑む。
 おわ。めちゃくちゃ可愛い! つかキレイ!
 睫毛長いし、色白いし、細いし……羨ましい。
「よかった。アタシのほうこそゴメン。ちょっとボケッとしてて」
 いやいや。君は全然悪くない。てか綺麗ってだけで許してしまうわ。
「あ」
 うっとりと見惚れていると、彼女がハッとしたような声を上げた。あたしもそれで我にかえる。
「スーツ……ってことは、一回生だよな?」
「え? ぁあ、ええ、そう」
 なるほど。見ると彼女もスーツ姿だった。ちきしょう、足ほせぇなぁ。
「ってことは同級生だな。よかった。アタシこの大学に知り合いいなくてさ。あんた何学科?」
 美少女はべらべらと人懐っこく喋りまくる。っていうか、やっぱさっきの言葉遣い聞き間違いじゃないのか……喋り方がまたなんともミスマッチだった。
「えと、日本文学、ですけど?」
 ちと戸惑い気味に応える。あまりにもギャップありすぎだろう。
「マジ!? 一緒じゃん! やった、これってもしかして運命? 一人で不安だったんだよ。よかったぁ。これから仲良くしような」
 はぃ?
 なんか、強引じゃない?
 つまり、あたし達はすでに友達になってしまったと。別にいいですけど。嬉しいですけど。
 こんな美少女だし?
 でもさ。なんつーか……強引なやっちゃなぁ。
「アタシは黒知 凪嗚(コクチ ナオ)。よろしくな」
 ニッコリと微笑みながら手をだされちゃ、それを掴まずにはおれんだろう。あたしもつられるように名乗り返し、しっかりと握手を交わした。
 こうして、入学式当日に、一人のとっても愉快な人物と、半ば強制的にお友達になったのだった。

 そのあとに待つ、人生革命に気づかずに。



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