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3/重大発表?





「うぅ……課題めんどぉだぁ」
 言いながら、ナオはパタリと後ろに倒れた。もともと正座していて、そのまま後ろに倒れたから、格好がかなり異様だ。
 器用なことするなぁ、と思いながらあたしは苦笑する。
「さっきからそればっかじゃん。全然進んでないんですけど」
「だってさ! 入学して一週間かそこらでこんな量の課題出す?! 普通」
 ナオはあたしの言葉に抗議するように起き上がって、机を叩く。
「んじゃきっと普通じゃないんでしょ」
「それは言わないお約束だしょぉ」
 また後ろに倒れる。どうでもいいけど、身体柔らかいなぁ、あんた。
「でもやんなきゃ終わんないよ。来週までなんだから」
「来週までまだ一週間もあるじゃん。何で課題が出た日に終わらす必要があるんだよぉ」
「バカね。他の授業でもこんな課題がでないとも限らないじゃないの。そしたらドンドン溜まっていく一方よ。でた端から片付けていけば、後々安心でしょ」
「もっともらしい答えだしぃ」
 当たり前だろう。もっともらしくない答えをいってどうするよ。
「アタシ、ギリギリ追い詰められないと本領発揮できないタイプなんだよネェ」
「んじゃあとで泣きながらやれば? そんかわしあたしは一切手伝わないからね」
「今頑張りマース」
 復活。
 と思いきや数秒も経たないうちに……
「えぇーん、シアちゃぁん。この訳わからないよぉ」
 泣きついてきた。
「やかましい。自力で解け。辞書あるでしょ」
「手が、手がっ! 辞書を引くのを拒むぅぅ」
「……やる気がないなら帰れ!」
「ちゃっちゃか終わらせちゃいマース」
 最初ッからそうしろよ。全く。
 あたしは小さく溜息をついて、課題のプリントに再び目を落とした。しかしナオにはああ言ったものの、奴の言う通り、確かにこの課題の量は尋常じゃなかった。
 入学して一週間。
 大学生という自覚も薄いまま、プリント十枚。しかも裏表プリントされているものを一週間でやってこいなんて。はぁ、ナオじゃないけど、マジで涙でそう。
 やり始めてから二時間経過するのに、できたのはたった一枚。半端ない難しさにさっきから全く進まないのだ。ったく、誰だよ、あんな教授雇ったの!
 あぁ、もう。頭痛い。
 終わりそうにない課題を前に、あたしは頭を掻いた。先が見えないだけに、やる気はドンドン失せていく。
 ナオに至っては、集中力などとっくの昔に事切れていた。シャーペンをいじりながら、テーブルの上で一人遊びを始めている始末。
 さっき真面目にやるっつったのに。
「……少し休憩しますか」
 仕方なく、あたしはシャーペンを置く。すると、待ってましたといわんばかりにナオの眼が光った。
「うんうん! もぅ、全然わっかんなくてさぁ。なぁなぁ、気分転換に散歩行かない?」
「散歩ぉ?」
 ナオは元気よく立ち上がり、あたしを立たせようと腕を引っ張る。あたしの答えを聞く前に、どうやら無理やり実行させるらしい。
「いいけどさぁ、何で散歩なのよ?」
「夜桜見に行こうよ! 夜桜!!」
「花見かよ。ってかこの時季もう散っちゃってるって」
「まだ許容範囲内だって!」
 意味わかんないんスけど。なんだよ花見の許容範囲内って。
「な、な? ダメぇ??」
 ぅわ。その子犬のような潤んだ瞳で見つめるのやめてよ。ただでさえ顔がいいんだからさ。
「わ、わかったよ。行くわよ。行きゃぁいいんでしょ」
 えぇい。半ばやけくそだ。
 まぁ、確かに夜の散歩に花見というのも悪くない。もっとも、見れる桜があればだけれど。
「やった! んじゃ早くいこ!! ついでにコンビニで何かおやつ買ってこう!」
 すでに気分ルンルン状態のナオ。スキップしながら玄関先であたしを呼ぶ。
 あんたさぁ、もう子どもじゃないんだから。そんな大はしゃぎしなくっても。苦笑しそうになるのを押さえ、あたし達は夜の散歩に出かけた。



 +++++



 街灯に照らされた道を、二人並んで歩く。
 桜は殆ど散っていて、中には葉桜になっているものもあった。
「やっぱ、花見はもう無理ねぇ」
「だな。でもいいじゃないさ、たまには散った後の桜を見るのも」
 ナオは上機嫌で嬉しそうにいう。まぁ、確かにたまになら悪くないかもね、こういうのも。
 あたし達はしばし散った桜を観賞し、夜の散歩を楽しんで、家に帰ることにした。
「あ、そうだ。どうせだからアイス買いにコンビ二寄って帰ろう!」
「は? 何でアイス? てかまたコンビ二行くわけ?」
 さっきとことんおやつ買ったじゃないか。まだ食うのかよ。
「突然アイスが食いたくなったの! いいじゃん! 行こ?」
 子どものようにはしゃぐナオ。その光景が何だかおかしくて、アタシは苦笑しながらその提案に頷く。
 コンビ二に入ると、ナオはわき目もふらずにアイス売り場まで直行する。
「何にしようかなぁ? シアは何にする?」
「あたしはもちろんチョコチップ」
 カップアイスのチョコチップ味を手にナオに示すと、「美味いよね、それ」といいながら、また自分が食べるアイス選びに戻る。
 真剣に悩むその横顔が、なんだか可愛かった。やっぱキレイな子は得だわねぇ。
「よし、決めた! アタシはコレにする!」
 そういって手に取ったのは、抹茶ミルク味のアイスだった。渋いですなぁ。
「ちなみに何と迷ってたの?」
「黒ゴマにするか抹茶にするかで悩んでた」
 やっぱもう一つの候補も渋いのね。和の方が好きならしい。
「んじゃ、精算して帰ろう」
 あたし達はレジで精算し、そのまま帰路についた。散歩に二時間弱も費やしていたらしい。辺りはちらほらと寝静まった気配があった。
「んじゃ、今日はもう遅いし、このまま帰るわ」
 玄関前で、ナオは自分用に買ったアイスを袋から取り出して、隣の自宅へ戻って行く。
「うん」
「風呂入ったあとにアイス食べよっと。んじゃ、おやすみ〜」
「はいはい。また明日」
 あたしはナオを見送ってから、自分の部屋へ入った。アイスが溶けないように、急いで冷凍庫にしまう。
 それから、先ほどやっていた課題のノートやら教科書やらがそのままになっているのに気づいた。
「そっか。やりっぱなしで散歩にでたから。しょうがないなぁ」
 どうせ明日も朝こっちにくるんだろうけど、やっぱもっていってやろう。あたしはそれらを手に、隣に向う。
「ナオ〜! ほら、教科書とノート忘れてた……よ?」
 チャイムを鳴らさずにドアを開けて中に入ると、異様な光景に出くわした。
「あ?」
 ナオの驚いた声。
 っていうか、それはあたしの台詞だ。
 丁度着替えていたらしく、上半身が裸だ。それは解ったよ。
 でもさ……
 何? その、まっ平らな胸。女の胸じゃない。あきらかにそれは……
 しかもロングの髪がばっさり切られたようにない。っていうか、ヅラ!!?
「ちょ……な、な?」
「あーぁ」
 いや、あーぁじゃなくてさ。
 今のこの状況を説明してよ!
 ていうか否定してよ!!
 その平べったい胸板は何!?
 そのヅラは?
 っていうか、あんた……男―――――ッ!??
 嘘でしょう!?
 あたしは眩暈がしてふらつくのを必死に抑え、意識を保つのが精一杯だった。



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