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1/メアと金閣寺





「観光だぁぁぁっ!!」
 さっきから同じ台詞ばっかりを叫びまくるアホが一人。やめてよ、恥ずかしいから。
「あいつホントに大学生? 恥ってもんを知らないんじゃないか?」
「まったくだわ」
 ジュンの呟きに、あたしは力いっぱい同意した。
「それにしても驚きだよ。シーちゃんに双子の兄妹がいたなんて」
「あははー、あたしもビックリだわ〜」
 今朝がた双子に会ったばかりの千夏は、紹介した時すんごいきょとんとしてた。大分間があってから驚きの悲鳴が上がって、こっちが驚いたくらいだ。
「メアちゃん可愛いし〜、大好きっ」
 そして千夏はメアにメロメロ状態だし。メアもメアで千夏に懐いてる。いいことだ。もちろん、ジュンは女性には基本的に優しいから、メアが懐いてることもあって千夏にもそれなりに紳士に接している。でもやっぱりナオには敵意を向けてる気がするんだけどね。
「えへへー。私もチーちゃん好きぃ。ナオ君も好きー」
 うお!? しかしそこでメアの爆弾発言。
「ままま、まって、メア? 何でナオは君付けなの?」
「んーと……」
 言いながら、メアはちらりと千夏を垣間見た。それからあたしに向き直り、にっこりと笑みを浮かべて首を横にふる。
「何となくだよ」
 うそん。今の間は何? あからさまな今の間は!?
 ちょ……まさか気づいてるとか!? いやまさか。まて、メアに限ってそれはなかろう。うん、なんてったってメアは超がつくほど鈍いんだから、まさか気づくはずないよね? ね?
 ……誰に確認とってんだよ、あたし。
 あたしは小さく吐息する。やめよう。考えれば考えるほど不安になってくるから。
「ね、それよりどこ行くの?」
「どこ行きたいんだよ」
 尋ねてみたら、逆に返された。そうねぇ、あたしは別にもう今更なんだけどさ。
「金閣寺金閣寺―! 金を見に行こうっ!」
「じゃぁ、とりあえず金閣寺だね」
 メアが言いながら、その方向を指差す。ごめん、メア……そっちは間逆だよ。
「メア反対。金閣寺はこっち」
 すかさずジュンが指摘する。相変わらず方向音痴なのね、メアは。それもそうか、自分の旅館で迷うくらいなんだから。
「あれ? こっちじゃなかったっけ?」
「違う。ほら、お前迷子になるんだから」
 言いながら手を差し出すジュン。それを躊躇いもなく握るメア。おーい、そこの二人。十五にもなる兄妹がナチュラルに手なんか繋ぐんじゃない。しかも当然二卵性だから似てないんだよ。傍から見れば恋人同士に見えるんだよ。
「どうした? シア」
 頭を抱えていると、ナオが疑問符を飛ばしながらあたしの肩を叩いた。
「別に……」
 色々とダメージ大きいのよ。双子のことにしても、あんたの正体にしても! つーかねぇ、本人よりあたしの方が正体ばれることに冷や冷やしてるなんておかしくないです?
 絶対何かおかしいよね?
「ぶつぶつさっきから何言ってんだ? 変な奴だなぁ」
「お前に言われたくないわっ!」
 間髪入れずあたしのツッコミ。
「ッたく誰のせ……」
 そこで、奴が嬉しそうな笑みを浮かべていることに気づく。は? 何でそこで笑うの? 意味不明なんだけど。
「ほら、行こうぜ」
「へ?」
 不覚にも奴の笑顔に見惚れてしまって、手を繋がれたことに反応するのが遅れた。意外に大きな掌。強い力。やっぱりこいつは男で、繋がれたら最後、あたしの力じゃ振り解けない。
「ちょ、ナオ!?」
 突然のことに、顔が急激に熱くなるのを感じた。そんなあたしを後目にぐいぐいと手を引っ張りながら、先を行く千夏達に追いつこうとするナオ。
 ちょっと待ってよ! 今の状況はジュン達より性質が悪いわよ!? 確かにあんたは男だけど、今は女装してるんだからね!? 傍から見たらいい歳した女二人が堂々と手を繋いでる状況なわけで……ッ!
「マジ勘弁して〜ッ!」
 虚しくもあたしの叫びがナオに聞き入れられることはなかった。



 +++++



「おぉっ、金閣寺〜!」
 二人の感嘆が響き渡る。もちろんナオと千夏だ。
 金閣寺につくなり、寺に走って行く二人。その少し後を呆れたように歩くジュンと、その三人から距離を置くようにして歩いているあたしとメア。
「……で? 相談って?」
 もともと今日の観光は、あたしがメアの相談にのるという条件で与えられたものだ。つまり、あたしの役目は観光案内ではなくメアの相談役なわけ。
「うん……これなんだけどね」
 躊躇うように一度前方にいるジュンに視線を送ってから、メアはカバンから一枚の紙切れを取り出す。あたしはそれを受け取りながら、首を傾げた。
「なにこれ?」
 裏も表も真っ白で、何も書かれていない。あたしは不思議に思って尋ね、それと同時にメアは続いてライターを取り出す。
 へ!? あんたなんでそんな物騒なもん持ち歩いてんの!?
「ちょ、め、メア!?」
 狼狽するあたしから紙切れを奪い、それに火をつけたライターを近づけて行く。ちょ、ちょ、こんなところで火は使っちゃダメでしょ!? っていうか、紙が燃える!
「はい」
「は?」
 しかし、メアはその紙を燃やすのではなく、あくまで火を近づけているだけだ。指し示すように差し出されたそこには、薄っすらと文字が浮かび上がっている。
 ……っていうか炙り出しかよ!? 今時!? なんて古典的な!
 あたしは安堵とも落胆とも取れる感情が入り混じったような溜息をつく。
 再び手渡された紙切れを、微妙な期待を抱きつつ受け取る。だって、今時あぶり出しって。何が書いてあるのかすんごく気になるでしょ?
「……は!?」
 しかしそんな期待も他所に、そこには、あたしには解読不能な文字が連なっていたのだった。


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