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撫茅家のお爺様




(※本編ACT08の2話目より後日談)

「そういえばさ」
 ナオの提案で焼肉を食べにきた店内で、注文した品が来るのを待っていた時分。ずっと気になっていたような口調で、ナオが唐突に口を開いた。
「何?」
「あのクイズが女将さんたちの仕業だったってことは解ったけど、八坂神社で手紙をアタシ達に渡してきたあのおっさんは一体誰だったんだ?」
「あ」
 問われ、確かにその疑問がまだ残っていたことに気づく。サングラスかけてたからよく解らなかったけど、どっかで見たことあるような気がするのよね。
 父さんが変装してるって線も考えられるけど、それだと少し老けすぎてたし、あんなに紳士な態度はとれないだろう。
「言われてみれば、あのおじさんのことは何にも出てこなかったねぇ」
「両親にあんな協力者がいるとも思えないし」
「何だ、シアにも解んないのか」
 考え込む三人。あたし達がいる空間だけ妙に静まり返っていたけど、それを破るように注文したものを店員が持ってきた。
 テーブルに置かれていく鮮やかな肉を見るなり、ナオはあっさりと自分でふった話題に終止符を打つ。
「ま、シアが解んないなら考えても無駄だし。せっかくの焼肉なんだし、忘れて食おうぜっ」
 気になることをふっておきながら、あっさりとしている。
 思いながら、確かに奴が言ってることも正論なので今回だけは突っ込まないでやることにした。
「じゃ、頂きましょうか」
「そうだね」
「よーし! 乾杯しようぜ、カンパーイ!」
 グラスのぶつかる音を合図に、あたし達は夕飯にありついた。



 一方撫茅家。
「先日はご苦労様でした、お父さん」
 仕事の方が一段落すると、データの整理をしていた老紳士に女将は声をかけた。彼女の台詞に、かけていた眼鏡をはずし、彼はモニタから視線を外す。
「私の変装もなかなか様になっていただろう?」
 きっちりとしたスーツを着込み、眼鏡をかけたこの老紳士は、にやりと悪戯な笑みを浮かべた。
「ええ、さすがお父さんだわ」
「しかし、子どもの成長は早いものだなぁ。私も年をとるわけだ」
 久々に見た孫の姿は、以前見たときよりも見違えるほど成長していた。ほんの数ヶ月離れていただけだというのに。
「嫌だわ、お父さんったら」
 そんな彼の台詞に、女将はバチンッと背中を叩き、突っ込む。
「まだまだ現役じゃありませんか」
「まぁ、詩亜が婿を迎えるまでは私がしっかりしなければな」
「そうですよ」
 言いながら、声をあげて笑いあう二人。
「詩亜が選んだ者に支配人の座を譲る日は、そう遠くないかもしれんなぁ」
 ふいに真摯な表情を浮かべ、ポツリと零す彼は、この女将の実の父であり、詩亜達の祖父である。
 そして、孫に気づかれぬような変装をやってのけるスキルを隠し持つ、れっきとしたこの旅館の支配人であった。




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