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10/イトコ



 やべぇ。
 ヤベェよこの状況!
 とりあえず笑って誤魔化して、屋上まで逃げてきたけど……
「なん……っで! アンタがここにいるのよ!?」
 あたしは開口一番、そう叫んでいた。
 この状況で叫ばずにいられようか? 否。それは否、だ。
『なんでって、あとつけたからに決まってるじゃん』
 ケロリとした表情で、悪気もなく応えるナイン。
 あぁ!? あとつけただぁ!?
「だから! なんであとつけたりなんかするのよ! あたし言ったわよねぇ? 家から出ちゃダメだって!」
『そうだっけ?』
 この野郎……
 ことごとくシラを切りやがって。
「あぁ、もぉっ! 学校だけがあたしの唯一のオアシスだったのに―――ッ!! あんたのせいで台無しよ! いったい何しにきたわけ!?」
『何しにって、俺も学校とやらに行ってみたくなったんだよ。いいじゃんか、別に』
「よくない! だいたいねぇ、誰でも入れるわけじゃないんだからね!?」
『じゃぁ、どうやったら入れるんだ?』
「は!? そりゃ……編入試験とか受けて、じゃないの?」
 よく知らないけど。
 だいたいアンタ戸籍ないじゃん! 住民票もないし!!
「とにかく! 他にもいろいろ手続きとか必要なんだから、ナインは学校にはこれないの!」
『ふぅーん』
「ふぅーん、じゃない! ……って、え? 納得したの?」
 珍しい。
 こんなにあっさり納得して引き下がるなんて。もしや槍でも降るんじゃぁ……?
『要するに、その手続きとかをクリアすればいいわけだろ?』
「へ? あ、うん。たぶん」
『うん。解った』
「は? え? ちょっ、ちょっと待って! 何が解ったわけ!?」
 出口に向かって歩き出したナインを引き止めるべく、あたしは叫んだ。だけど、奴はすでに扉の向こうに消えていた。
 ちょっと、何する気なわけ?
 ねぇ、お願いだからこれ以上話をややこしくしないでよ!?
「……何か、すっごく不安」
 あたしは一抹の不安を覚え、奴の後を追うように出口へと駆けた。





 お願い。
 夢なら覚めて。早く覚めて!
 この悪夢からあたしを目覚めさせてくださいっ!
「ずいぶんやることが強引だわねぇ。彼」
 後ろからナルちゃんの呟き。
 あぁぁぁ……夢ではないのね?
 現実なのね!?
「……と、いうわけで、急な転校生だが、みんな仲良くするように。それじゃ、挨拶してもらえる?」
 担任が笑顔で隣に立つ人物を見る。クラス中の視線がそこに集中した。
『宝永(トミナガ) ナインです。父が日本人で母がフランス人のハーフです。ついでに、まあさとはイトコ同士なんで。よろしく』
 おいおい。誰と誰がイトコ同士だって? え?
 つーかなんでアンタそんな簡単に入学なんかしてるわけ!?
 さっきの今でどうやって!? 何ちゃっかり転校生しちゃってんの!?
 誰か疑おうよ! そんな黄色い悲鳴上げてないでさぁ!
「あたしの穏やかな学校生活が……」
 害されていく。段々奴に害されていく。
「お気の毒」
 ポンッと肩を叩かれる。ホントだよ。ホントに気の毒だよ、あたし……
『あ、先生。俺、できればまあさの隣がいいんですけど』
 は!? 何言ってんのあの人!?
 しかもその台詞のせいであたしに視線が集まるし。何か女子殺気立ってるし。
「そうだな。イトコ同士なら気もおけるだろうし、悪いが席代わってやってくれ」
 あっさりと奴の要望を受け入れて、担任があたしの隣の男子に告げる。彼もあっさりと承諾してしまうし。
 お願い、抵抗してください! 私はあなたの隣がいいんです!
『案外ちょろいもんだなっ』
 席を譲ってもらったナインが、座りながら小声で呟く。
 ちょろいって……アンタ何をしたわけ!?
『ま、何はともあれ、よろしくな。まあさ』
 奴はご機嫌よろしく、にんまりと笑った。


 こうしてあたしの学校生活は、悪夢の幕開けとなったのだ……―――――





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