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ナインvsひなた


 日々日常的に起こっている闘いがある。
 リビングのソファの上で、睨みあう悪魔と一匹。
 一触即発な雰囲気に、辺りの温度が低下する。
 言葉なく睨み合うその様は、傍から見れば一人の男がか弱い一匹の小動物を苛めて入るようにも見える。案の定、まあさにはそう見えたらしい。
「ちょっとナイン!? 何やってんの!?」
 洗濯物を終えて戻ってきたまあさの姿を捉えるなり、ひなたは態度を一転させた。殺気立っていた毛もしおれ、びくびくと怯えるような態度をとったのである。つまり、ナインに苛められていた、という演技を自らやってのけたのだ。
 先手を打たれ、見事にまあさを味方につけたひなたに、ナインは顔を引きつらせる。
『や、違う! 俺は何もっ』
「嘘つかないの! ヒナこんなに怯えてるじゃない!」
 ナインを一喝し、まあさはひなたを抱き上げる。労わるように頭を撫でた。
 その態度の違いに、ナインはムッと機嫌悪く顔を顰める。しかもそれに追い討ちをかけるように、ひなたの鼻で笑うような鳴き声が続いた。ナインをちらりと垣間見、勝利を誇ったような視線を投げる。
 あれがもとは自分の魔力だったのかと思うと、ナインは腸が煮えくり返るような屈辱を感じた。腹立たしいにも程がある。しかしながら、当然まあさにはひなたの鳴き声は怯えているために発せられたものとしか認識されなかった。
『てんめぇ!』
「ナイン!! いい加減にしなさいっ!」
 逆上したナインを叱咤するまあさの怒号の声が続く。
『まあさっ! 俺はなにもしてないぞ!? そいつと俺、どっちを信用するんだよ!?』
「信用するも何も、あんたがまともなこと言った試しがないじゃない。ヒナに決まってるでしょ」
 あっさりと返されて、ナインはやつあたりの如くひなたを睨みつけた。悔しさが顔から滲み出ている。
『くそっ、覚えてろよ畜生ッ』
 喚きながら部屋を出ていくナインの捨て台詞は、しかしまあさにとって、負け犬の遠吠えにしか聞こえなかった。

 こうして、まあさを取り合うという悪魔と一匹の闘いは、ひなたの巧みな策略のもとに幕を閉じるのだった。





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